[更新しました] 八ヶ岳高原音楽堂 30周年記念事業として、チェンバロが常設されました

八ヶ岳高原音楽堂 30周年記念事業として、チェンバロが常設されました。

八ヶ岳高原ロッジ音楽堂
日本経済が未曾有の活況に沸いた80年代後半、ピアノの巨人リヒテルの助言によって、八ヶ岳高原音楽堂は誕生しました。今年は開堂30周年を迎える記念の年。そのメモリアルの象徴として、古楽器界念願の常設チェンバロが、満を持して設置されます。

数年前からこの企画に関わり、準備を進めてきましたが、都会のコンサートホールでは考えられない雄大な自然に溶け込んだ、まるでこの地に息づくひとつの生命体のような音楽堂にふさわしいチェンバロとは、一体どのような楽器を提供すべきなのか、大いに悩みました。

まもなくひとつの方向性を見出す事が出来ました。この八ヶ岳の自然の中で育まれた、いわば土着の素材を用いて製作すること。実は音楽堂もそのコンセプトで建造された事を後日知り、きっと音楽堂が私に与えてくれた使命なのだと、腑に落ちました。

すると不思議なことに、次々と良いご縁に恵まれることになります。樹齢100年超のカラマツの良材をお世話頂いた新木場の材木問屋も、古くからお付き合いのあるお店でしたし、地元の材木商からは、脚部に最適なケヤキ材を調達することが出来ました。

そしてこのチェンバロの、ひとつのハイライトはフタの裏の装飾です。日本人である私が、日本の素材を用いて製作した、いわば純血種のジャパニーズ・チェンバロですが、妙な和風の意匠に仕上げるのは、自身の美学が抵抗するのです。

そこで思い付いたのは、旧知のパリの金箔工房アトリエ・HIGUEでした。この工房にフタ板を送り、装飾を依頼したのです。テーマはシノワズリで、技法や内容は自由にと。
シノワズリは18世紀ヨーロッパ宮廷で流行した、いわゆる東洋趣味、異国情緒。

アトリエはクラヴサンの装飾は初めてという事で、パリの楽器博物館に足を運んで大いに刺激を受けたらしく、期待をはるかに上回る素晴らしい仕事で応えてくれました。

5月3日 お披露目コンサートは、現代最高のプレイヤーの一人ロバート・ヒル氏。演目は熟達のゴルトベルク変奏曲。聴衆250名満席の喝采は、止む事を忘れたかのように続きます。

地元の音楽ファン、ロッジや別荘に滞在のお客様はもとより最遠は沖縄から、この日を楽しみにご来訪下さいました皆様、感動を共に頂きましたこと、心より感謝申し上げます。

今後のチェンバロへのご要望など、お寄せ下さい。